・・太宰治に関するミニ案内(#2406)・・

太宰治の作家人生、三期の区分(前・中・後期)と五人の女性

太宰の文学は、その作品傾向から、一般に「前期」、「中期」、「後期」の三期に区分される。

その各期を実人生の観点から見ると、次のように整理できる。

*「前期」=生家と井伏鱒二と社会に甘えた奔放生活 … 破滅を認識、再起を決意
*「中期」=生家と井伏鱒二と社会の規制に服した生活 … 平穏な処世、家庭生活
*「後期」=生家と井伏鱒二と社会から分立の独善生活 … 糸が切れた凧の状

そして、各期毎に太宰の文学人生に深く関わった女性がおり、その節目を成している。

(詳細は、別記項目「太宰治(人生と作品)」(サイト内リンク)参照)

*「前期」(S8~S13(1938)=生家と井伏鱒二と社会に甘えた奔放生活…破滅を認識、再起を決意。
  
   主な作品創作集「晩年」(「葉」など短編15篇)、「二十世紀旗手」、「HUMAN LOST」・・
   作品傾向人間や環境への不信、不安、反抗、自殺などが軸で、実験的、難解な作品も多く、総じて暗い。


  ・田部シメ子(たなべ しめこ:T1(1912).12.2~S5(1930).11.29 享年17歳)
   
   内縁の夫と共に広島から上京し(S5/7)、生活のため銀座のカフェ「ホリウッド」で女給
   (通称名:田辺あつみ)をしていた。同年11月中旬、客として来店した太宰と知り合い、
   同月28日に鎌倉腰越海岸の畳岩上で太宰と睡眠薬服用の心中を図り死亡した。

   太宰は助かり 自殺幇助罪に問われたが起訴猶予となった。

    (詳細は、別記項目「太宰治(人生と作品)-女性は死亡」(サイト内リンク)参照)

  ・小山初代(おやま はつよ:M45(1912).3.10~S19(1944).7.23 享年32歳)
   
   太宰が弘前高校1年時(S2・18歳)に青森市の小料理屋で馴染みになった芸妓(紅子)。
   太宰は東大入学(S5/4)で東京へ、初代も太宰の手引きで青森を出奔(S5/9)し上京。
   津島家は太宰を分家除籍することで結婚を許し、鎌倉腰越での心中事件などがあったが
   東京で世帯を持った(S6/2:入籍なし)。大学卒業などを条件に十分な仕送りがあった。
   
   太宰の遠縁の友人画学生(小館善四郎)との不貞があり、太宰と水上心中未遂の後に
   離縁(S12/6)となった。青森帰郷後、苦難を経た末に中国の青島で終戦前に病死した。

   (詳細は、別記項目「太宰治(人生と作品)-妻初代が・・」(サイト内リンク)参照)

*「中期」(S13~S20(1945)=生家と井伏鱒二と社会の規制に服した生活…平穏な処世、家庭生活。

   主な作品「満願」、「富嶽百景」、「女生徒」、「走れメロス」、「待つ」、「津軽」、「お伽草子」・・
   作品傾向愛と優しさ、明るさが平易な文章で表現され、検閲下、古典の翻案など工夫して発表を続けた。


  ・津島(旧姓石原)美知子(つしま みちこ:M45(1912).1.31~H9(1997).2.1 享年85歳)
   
   父の勤務地島根県で生れ、10歳頃に甲府市へ転居。東京女子高等師範学校(現・
   お茶の水女子大)を卒業。山梨県立都留高等女学校の教師時(26歳)に井伏鱒二の
   紹介、仲人で太宰と見合い(S13/9)、結婚(S14/1)した。
   
   子供は3人(故人)…長女:夫は政治家津島雄二、長男:早世、次女:津島佑子(作家)

*「後期」(S20~S23(1948)=生家と井伏鱒二と社会から分立の独善生活…糸が切れた凧の状態。

   主な作品「パンドラの匣」、「ヴィヨンの妻」、「斜陽」、「桜桃」、「人間失格」、「如是我聞」・・
   作品傾向戦後新時代は期待が裏切られ、怒り、批判を退廃的、自己破壊的に表現した重い暗い作品が多い。


  ・太田静子(おおた しずこ:T2(1913).8.18~S57(1982).11.24 享年69歳).
   
   離婚(S15)後に太宰と初対面(S16/9・28歳)。太宰疎開中は文通、戦後再会し愛人に
   なり小説「斜陽」の元になる日記を提供、太宰との間に太田治子(現・文筆家)
   生まれた(S22/11)。

    (詳細は、別記項目「太宰治と太田静子と「斜陽」」(サイト内リンク)参照)

  ・山崎富栄(やまざき とみえ:T8(1919).9.24~S23(1948)6.13 享年28歳)

   戦争未亡人。太宰と初対面(S22/3・27歳)直後から愛人関係になり、太宰の世話をする
   ため美容師を辞めるなど本気で太宰に尽くした。「人間失格」脱稿の1か月後、太宰と
   玉川上水に入水、共に死亡した。

    (詳細は、別記項目「太宰治と山崎富栄と「人間失格」・「グッド・バイ」」(サイト内リンク)参照)

                   (本項「太宰治の作家人生「前期、中期、後期」と五人の女性」…2024/6UP)