・・太宰治に関するミニ案内(#2412)・・

太宰治に関する三島由紀夫の評論、発言、書簡など一覧

三島由紀夫は、生涯を通して強烈な「太宰治嫌い」を積極発信した。

このことについては、次の別項目(サイト内リンク)に詳記した。

「太宰治と三島由紀夫の対面と三島の「嫌いです」発言の真相」

「太宰治と三島由紀夫の対面・会話の実際と三島の”太宰嫌い”」


本項は、三島が発信した太宰に関する評論などの一覧表です。

出典は、「決定版 三島由紀夫全集 全42巻、補巻」(2000~2006:新潮社)で、
本文中に「太宰治(もしくは大宰)」の名前があるタイトルを一覧にしました。
(全集には収録のない発言記事3点を加えました。)

・漏れがあると思いますが、それはご容赦ください。太宰の名前
はあっても
三島は言及無しの場合には除外しました。

・「区分」「巻」は全集(決定版)の表示で、「/」は収録無しです。
・「記述内容メモ」は本表作成者個人のいわば備忘録です。

(「茶色表示」は、本表作成者が特に注目すべきと判断したもの)
  初出年月  タイトル   区分 巻   記述内容メモ  初出紙誌
1 S19/10
(1944)
跋に代へて
  ―「花ざかりの森」
 
評論 26 ・林富士馬に親炙し、立原、中原、太宰
 より身近い痛さをもって感得。 
「七丈書院」刊 
2  S21/12
(1946)
会計日記
 (日付:S21.12.14)
 
その他  補巻 ・「飲み会に出席し、太宰と亀井に
 会った」との記載
。 
この日記の公開は
  H17(2005)
  
3  S22/1
(1947)
高橋清次宛
  (S22.1.9 書簡)
 
書簡  38 ・創作は豊島さんと太宰さんが面白
 そう。(太宰は「トカトントン」)
 
 - 
4  S22/6
(1947)
高橋清次宛
  (S22.7.27 書簡)
 
書簡  38 ・伊藤整を「地獄」で、太宰(例えば
 トカトントン)よりも遥に信用する。
 -
5  S22/7
(1947)
清水基吉宛
  (S22.7.27 書簡)
書簡  38 ・太宰と石川淳は時代の残滓。高貴な
 文学の卑賎な裏切り者、小者。
 
 - 
6 S22/10
(1947)
川端康成宛
  (S22.10.8 書簡)
書簡 38 ・「斜陽」3回分を読み、完成に不安感
 と期待を示すが批判は無し。
 -
 7 S23/2
(1948)
文芸時評 評論 27 ・太宰の「犯人」には「花火」にあった
 最も大切な「的確さ」が全く欠如。
S23.2.17-18
     「時事新報」
 8 S23/9
(1948)
没落する貴族たち 評論 27 ・太宰の文学的稚臭が「斜陽」で没落
 貴族の悲劇を一般化したともいえる。
S23/9 「婦人公論」
 9 S23/1
(1948)
そぞろあるき
    ―作家の日記
評論 27 ・6/12(土)亀井と講演。S21暮に
 太宰と共に会って以来1年半ぶり。
S23/11 「芸苑」 
 10 S24/3
(1949)
船橋聖一との対話
    対談/船橋聖一
対談 39 ・太宰には原罪観念、倫理観が無いから
 デカダンスが感じられない。
S24/3 「文学界」 
  三島
24歳
 (参考) S24/7
  
「仮面の告白」刊行
    ・大蔵省を辞めて、作家に専念  
 11 S24/12
(1949)
檀一雄宛
 (S24.12.16 書簡) 
書簡 38 ・太宰の文学に関しては、私は最も敵意
 ある、冒涜的な読者。
 -
 12 S24/12
(1949)
芸術の危機ー
文芸時評1 「東京新聞」
評論  27 ・加賀淳子「浮雲城」の華族の軽薄、
 空疎さは太宰の偽華族より・・
S24.12.29
     「東京新聞」
 13 S25/2
(1950)
朝日新聞インタビュー
物天気図 三島由紀夫
 / ・「太宰は滅亡的センチメンタリズム。
  太宰は大きらい。」と、自ら発言。
S25.2.4
「朝日新聞(夕刊)」 
 14 S25/4
(1950)
 創作批評
  対談/河上徹太郎
対談  39 ・太宰の死は、ギャップの喜劇としての
 時代性しか持たない。
S25/4 「風雪}
 15 S25/8
(1950)
檀一雄「元帥」について 評論  27 ・檀一雄著「元帥」の書評。太宰を一種
 の浪漫主義的天才と表現。
S25/8 「人間」
16 S26/1
(1951)
言ひがかり 評論  27 ・太宰のアンケ回答「願ったって何も
 出来やしねえ」を引用(大宰評なし)
S26.1.4
「朝日新聞(大阪)」
 17 S26/6
(1951)
批評に対する私の態度
―批評家に小説が分かるか
評論  27 ・太宰が志賀に負けたのは志賀文学を
 理解した故。理解した方が負け。
S26/6 「中央公論 
      文芸特集」
 18 S29/1
(1954)
福田恆存宛 
   (S29.1.3 書簡)
書簡  38 ・加藤道夫君の死は太宰や原民喜の如き
 被害妄想売りがなく美しい。
 -
  三島
29歳
 (参考)
  S29/6「潮騒」刊行
  4 ・「新潮社文学賞」受賞  
 19 S29/8
(1954)
女神  小説  5 ・客人が太宰の心中を話題にし、主人公
 は興味を持った。
S29/8~S30/3
   「婦人朝日」
20 S29/10
(1954)
まへがき 
  「創作代表選集14」
評論  28 ・文学的傾向の情緒的統一は太宰の時代
 が頂点で以降は下り坂。
S29/10 「講談社」刊
 21 S30/11
(1955)
小説家の休暇 評論 28 ・治りたがらない病人、自分の弱さを
 題材にするなどと強い嫌悪を表明。
S30/11  「講談社」刊
 22 S31/1
(1956)
無題 第二回「新潮」
  同人雑誌賞選後評 
評論 29 ・私は名代の太宰文学嫌いで、太宰の
 一寸した匂いがしてもダメ。
S31/1 「新潮」 
  三島
31歳
  (参考) S31/1-10
     「金閣寺」連載
  6 ・「読売文学賞」受賞  
 23 S31/2
(1956)
奥野健男著「太宰治論」
  付録 「出版だより」
評論  29 ・太宰との対面時に嫌いと言ったなど
 自分と太宰、奥野との違いをPR 
S31/2(本体付録推薦 文)「近代生活社」刊
 24 S31/9
(1956)
ボディ・ビル哲学 評論  29 ・破滅型の坂口や田中英光、太宰も
 頑丈。自ら心身を不均衡にした。
S31.9.20
   「漫画読売」 
 25 S32/4
(1957)
キーン・ドナルド宛
  (S32.4.30 書簡) 
書簡  38 ・「人間失格」を翻訳とのこと、自分は
 太宰嫌いだが意味深いと思う。 
 - 
 26 S32/5
(1957)
コリン・ウィルソン著 「アウトサイダー」をめぐって 評論  29 ・日本では太宰「人間失格」が代表格
 だが、市民に許された甘えっ子。
S32.5.6-8
「東京新聞(夕刊)」 
 27 S33/3
(1958)
心中論  評論  30 ・若者の心中には大宰などの中年者の
 不潔さがない。 
S33/3 「婦人公論」 
 28 S33/4
(1958)
裸体と衣装
  (日記 S33.8.25)
評論  30 ・太宰のことを米国の編集者に問われ、
 「大きらい」と答えた。 
S33/4~S34/9
     「新潮」 
 29 S33/7
(1958)
作家と結婚  評論  30 ・僕の中に大宰的要素はある。
 それが外から見えるのは嫌。 
S33/7 「婦人公論」 
 30 S34/11
(1959)
劇作家のみたニッポン 対談 /テネシー・ウィリアムズ 評論  30 ・太宰が嫌いな理由は、感情がロマン
 チックで自分の弱さを宣伝するetc. 
S34/11 「芸術新潮」 
  三島
36歳
 (参考)
  S36/1「憂国」刊行
  20 ・右翼志向を強める。  
 31 S36/3
(1961) 
野生の敗北―文学座の
  地獄のオルフェウス」 
評論  31 ・T.ウィリアムズが太宰の「斜陽」に共感
 しているのは面白い。 
S36.3.26
 「朝日ジャーナル」 
 32  S37/2
(1962)
青春の荒廃 
中村光夫「佐藤春夫論」
評論  32 ・太宰は佐藤の教理に従って反アドルフ
 的文学と生活破滅を演じた。 
S37.2.25
 「朝日ジャーナル」 
 33  S37/12
(1962)
第一の性―男性研究講座、        男性人物講座  評論  32 ・暴君的亭主はデリカシーの一タイプ。
 如実に描いたのが太宰の「桜桃」。 
S37/12~S39/12
    「女性明星」 
 34  S38/1
(1963)
私の遍歴時代  評論  32 ・自伝:二項目で太宰との対面を書き、
 太宰を強烈批判…不実の記述あり。 
S38.1.10~S38.5.23
「東京新聞(土曜)」
 35  S39/1
(1964)
七年後の対話
 対談/石原慎太郎
対談  39 ・自意識において破滅する作家は
 太宰治みたいなのをいう。 
S39/1 「風景」 
 36  S39/4
(1964)
キーン・ドナルド宛
  (S39.4.15 書簡) 
 書簡  38 ・キーンの「太宰治集」解説に対し、
 正しい批判もあるなど賛辞。
 -  
 37  S39/5
(1964)
文学における硬派
日本文学の男性的原理 
評論 33 ・太宰は硬派的エモーションを軟派的に
 誤用して自己崩壊した。 
S39/5 「中央公論」 
 38 S39/5
(1964) 
NHKラジオ:インタビュー
 作家訪問・三島由紀夫
 /  / ・高校生の質問に「自分は太宰に似た
 ところがある。違う立場を堅持する。
(文字起こし)H24/5
  「太宰治研究24」
 39 S39/9
(1964) 
現代作家はかく考える
  対談/大江健三郎 
対談  39 ・「斜陽」批判の理由は、風俗的な
 真実はその時代には大事だから。 
S39/9 「群像」 
 40 S41/3
(1966) 
推薦者のことば
 「大江健三郎全作品」
評論  34 ・太宰以来、大江に至って日本の
 現代は初めてその「時代病」を発見。 
S41/3 (内容見本)
    「新潮社」刊 
 41 S41/8
(1966) 
無題
―フシギな男三島由紀夫 
評論  34 ・外形哲学-男は力に溢れてるべき。
 青年の太宰かぶれは気になる。
S41.8.1
   「平凡パンチ」 
 42 S41/9
(1966) 
テネシー・ウィリアムズ
         のこと 
評論  34 ・太宰の英訳は秀逸も、好きは困る。
 氏の作品の弱点に太宰的がある 
S41/9 「悲劇喜劇」 
 43 S41/10
(1966) 
対話・日本人論
   対談/林 房雄 
対談  39 ・太宰は今でも青年にアピールし、
 自己憐憫、弱さの表白が受ける。 
S41/10 
   「番町書房」刊 
 44 S42/6
(1967) 
自衛隊を体験する:46日間
のひそかな”入隊”
評論 34 ・私の「太宰は人間の弱さを強調する
 ので嫌い」に防大生から反論あり。 
S42.6.11 
  「サンデー毎日」 
 45  S42/10
(1967)
青年論―キミ自身の
 生き方を考へるために
評論  34 ・マンの「トニオ・クレーゲル」は勧め
 ない。太宰のように青年を甘やかす。
S42.10.5
    「平凡パンチ」
 46 S42/11
(1967) 
 無題―
「坂口安吾全集」推薦文
評論  34 ・太宰がもてはやされ、坂口が忘れ
 られるのはおかしい。
S42/11 
     「冬樹社」刊
 47  S43/1
(1968)
武器の快楽
   対談/大藪春彦 
/ ・太宰は才能ある立派な作家だが存在は
 唾棄すべき。
S43.1.9
 「週刊プレイボーイ」
 48  S43/4
(1968)
私の文学を語る
   対談/秋山 駿 
対談  40 ・浪漫派の作品について「太宰のある
 ものとか、いいものはいい。」 
S43/4 「三田文学」 
 49  S43/4
(1968)
対談・人間と文学
  対談/中村光夫 
対談  40  ・大宰人気は青年だけ・太宰は自分は
 ピエロという。それが最も嫌い。
・太宰は自分が下降し、上昇を否定。etc.
S43/4 「講談社」刊 
 50 S44/3
(1969) 
壮麗なる”虚構”の展開  評論  35 ・太宰のような自己崩壊を重ねる文士の
 自殺は軽蔑する。 
S44.3.30
  「朝日ジャーナル」
 51  S44/4
(1969)
国家革新の原理-学生
とのティーチ・イン 討論
対談  40 ・自分は太宰と対照的な方向へ行くが
 根底に太宰と触れるところがある。 
S43.6.16
   (於・一橋大学)
 52 S44/9
(1969) 
「春の雪」について
  (プルーストは……) 
評論 35 ・私が書いた貴族生活は太宰が書いた
 「斜陽」のようなイカサマではない。 
S44/9
「芸術座プログラム」 
 53  S45/1
(1970)
道理の実現
 ―
「変革の思想」とは 
評論 36 ・石川達三の「太宰が持ったような一種
 の自己崩壊への願望」を引用。 
S45.1.19・21・22
 「読売新聞(夕刊)」
 54 S45/5
(1970) 
三島文学の背景
   対談/三好行雄 
対談 40 ・太宰批判は「芸術と生活の二元論」
 から。一元化は両方をだめにする。
S45/5「国文学 解釈
と教材の研究 増刊」
 55  S45/7
(1970)
エロスは抵抗の拠点になり
得るか 対談/寺山修司
対談  40 ・太宰の「斜陽」の敬語の間違いには
 耐えられない。
S45/7 「潮」 
 56  S45/12
(1970)
破裂のために集中する
     対談/石川淳 
対談  40 ・大宰みたいに、私はピエロですよと
 いうのはとっても許せない。 
S45/12 「中央公論」 
  三島
45歳
 (参考)
S45(1970).11.25 死去
    市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部
で隊員に決起を促した後、割腹自殺
 

HOME (総目次)


「太宰治と三島由紀夫の対面と三島の「嫌いです」発言の真相」

「太宰治と三島由紀夫の対面・会話の実際と三島の”太宰嫌い”」

-----------------------------------------------------------------
               (本項「太宰治に関する三島由紀夫の評論、発言、書簡など一覧」 R6/12 UP)