「阿佐ヶ谷文士村」名簿
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--- 小冊子『阿佐ヶ谷文士村(杉並区立阿佐ヶ谷図書館)』(平成5年発行)から ---
(「名前」欄は、井伏鱒二を除き五十音順 ・ 「転入」欄は、杉並区域へ転入の年(その後、区内や区外への転居
もある)。「備考」欄は他の資料も参照した。(”左翼”は、左翼文学、運動面で積極的に活動したことを示す)
「阿佐ヶ谷会」メンバー
名前 | 生年-没年 | 分野 | 出生地 | 転入 | 備考 |
井伏鱒二 | M31-H5 | 小説家 | 広島県 | S2 | 将棋会 一般に阿佐ヶ谷会の中心者と目される |
青柳瑞穂 | M32-S46 | 詩人 仏文学者 | 山梨県 | S2 | 将棋会 |
伊藤 整 | M38-S44 | 小説家 評論家 | 北海道 | S3 | 昭和を代表する知識人文学者の一人 |
巌谷大四 | T4-H18 | 評論家 編集者 | 東京都 | S20 | 文壇史・交遊録・作家論などを執筆 |
臼井吉見 | M38-S62 | 評論家 小説家 | 長野県 | S23 | 文学評論・社会時評・小説・随筆等幅広い活躍 |
小田嶽夫 | M33-S54 | 小説家 中国文学者 | 新潟県 | S4 | 将棋会 |
亀井勝一郎 | M40-S41 | 評論家 | 北海道 | S6 | 将棋会 左翼−転向 |
河盛好蔵 | M35-H12 | 仏文学者 評論家 | 大阪府 | S9 | S4転入の資料あり S61・文化勲章 |
上林 暁 | M35-S55 | 小説家 | 高知県 | S11 | 将棋会 |
木山捷平 | M37-S43 | 小説家 | 岡山県 | S7 | 将棋会 |
蔵原伸二郎 | M32-S40 | 詩人 | 熊本県 | T13 | 慶大同窓の青柳と骨董を通じ親交 |
新庄嘉章 | M37-H9 | 仏文学者 | 広島県 | S24 | <早稲田文学>を復刊、新人発掘に努力 |
太宰 治 | M42-S23 | 小説家 | 青森県 | S8 | 将棋会 戦後の阿佐ヶ谷会には不参加 |
田畑修一郎 | M36-S18 | 小説家 | 島根県 | S3 | 将棋会 取材中に盛岡で急病死 |
外村 繁 | M35-S36 | 小説家 | 滋賀県 | S8 | 将棋会 |
中野好夫 | M36-S60 | 評論家 英文学者 | 愛媛県 | S9 | 原水爆禁止など戦後の民主主義運動に関与 |
火野葦平 | M39-S35 | 小説家 | 福岡県 | S2 | S12(下)「糞尿譚」で芥川賞。「麦と兵隊」等 |
古谷綱武 | M41-S59 | 評論家 | ベルギー | 不詳 | 将棋会 |
三好達治 | M33-S39 | 詩人 | 大阪府 | S4 | 昭和を代表する抒情詩人 |
村上菊一郎 | M43-S57 | 仏文学者 詩人 | 広島県 | S10 | 将棋会 |
保田與重郎 | M43-S56 | 評論家 | 奈良県 | S8 | <日本浪曼派>の代表的論客 |
安成二郎 | M19-S49 | 歌人 ジャーナリスト | 秋田県 | S2 | 将棋会 戸籍上の生年は「M21」 |
(注) ”将棋会”(12名)は私見による戦前の”阿佐ヶ谷将棋会”メンバー。他に中村地平・浅見淵・秋沢三郎・浜野修の
4名(計16名)がいるが本冊子には名前がない。阿佐ヶ谷界隈に住んだことが確認できなかったようだが、
秋沢と浜野は昭和9年頃に居住したことは確かだ。中村と浅見は近くに住んでいたが杉並区域ではなかった。
なお、『杉並文学館-井伏鱒二と阿佐ヶ谷文士-』(H12:杉並区立郷土博物館発行)には、杉並区に居住したことが
あると確認できた”杉並の作家”159名の掲載があるが、阿佐ヶ谷会会員の表示は上記とは異なる部分がある。
阿佐ヶ谷界隈に住んだ文士たち
名前 | 生年-没年 | 分野 | 出生地 | 転入 | 備考 |
石井桃子 | M40-H20 | 児童文学者 | 埼玉県 | S25頃 | S15転入の資料あり・井伏と親交 |
伊馬春部 | M41-S59 | 劇作家 | 福岡県 | S7 | [荻] 井伏・太宰らと深い親交 |
大倉桃郎 | M12-S19 | 小説家 | 香川県 | T15 | 日露戦争を体験:代表作「平和の日まで」 |
大田黒元雄 | M26-S54 | 音楽評論家 | 東京都 | T4頃 | NHK”話の泉”出演・自宅跡は「大田黒公園」 |
大宅壮一 | M33-S45 | 評論家 | 大阪府 | S2 | 左翼・戦後マスコミで活躍 多くの流行語生む |
小川未明 | M15-S36 | 童話作家 小説家 | 新潟県 | S5 | 日本最初の創作童話集「赤い船」刊行(M43) |
恩地孝四郎 | M24-S30 | 版画家 装幀家 | 東京都 | S7 | 萩原朔太郎「月に吠える」の挿絵と装幀は有名 |
川崎小虎 | M19-S52 | 日本画家 | 岐阜県 | T15 | 東山魁夷は女婿 |
北原白秋 | M18-S17 | 詩人 歌人 | 福岡県 | S15 | 没年まで約2年半居住 |
金田一京助 | M15-S46 | 言語学者 | 岩手県 | T14 | S29・文化勲章 |
小島烏水 | M6 -S23 | 登山家 文学者 | 香川県 | S2 | 日本山岳会創立発起人 浮世絵も研究 |
小林多喜二 | M36-S8 | 小説家 | 秋田県 | S5 | [荻] 左翼・官憲による拷問死 |
芝木好子 | T3 - H3 | 小説家 | 東京都 | S16 | S16(下)「青果の市」で芥川賞 |
澁川 驍 | M38-H5 | 小説家 | 福岡県 | S10 | 武田麟太郎の<人民文庫>に参加 |
下村千秋 | M26-S30 | 小説家 | 茨城県 | T12 | いわゆる「ルンペン文学」の先駆 |
住井すゑ | M35-H9 | 小説家 | 奈良県 | T14 | 農民作家の犬田卯は夫 |
田河水泡 | M32- H1 | 漫画家 | 東京都 | S8 | 「のらくろ」が有名 |
立野信之 | M36-S46 | 小説家 | 千葉県 | S6 | [荻] 左翼ー転向 S27(下)「叛乱」で直木賞 |
田部重治 | M17-S47 | 英文学者 随筆家 | 富山県 | T13 | 山の随筆家としても有名 |
谷川徹三 | M28- H1 | 哲学者 | 愛知県 | S3 | 法大教授-総長歴任 谷川俊太郎(詩人)の父 |
田宮虎彦 | M44-S63 | 小説家 | 東京都 | S13 | 武田麟太郎の<人民文庫>に参加 |
近松秋江 | M9 -S19 | 小説家 | 岡山県 | S12 | 私小説作家 |
津田青楓 | M13-S53 | 画家 随筆家 | 京都府 | S5 | [荻] 夏目漱石門下 |
戸坂 潤 | M33-S20 | 哲学者 評論家 | 東京都 | S6 | 左翼・獄死 |
徳川夢声 | M27-S46 | 著述家 タレント | 島根県 | S2 | [荻] NHKラジオ「宮本武蔵」朗読が絶賛された |
富田常雄 | M37-S42 | 小説家 | 東京都 | S20 | S24(上)「面」「刺青」で直木賞 |
中川一政 | M26- H3 | 画家 随筆家 | 東京都 | T14 | S50・文化勲章 |
中谷孝雄 | M34-H7 | 小説家 | 三重県 | S2 | [荻] 梶井・外村と<青空>創刊 |
中山省三郎 | M37-S22 | 詩人 露文学者 | 茨城県 | T15 | 火野・田畑らと<街>刊行 |
新居 格 | M21-S26 | 評論家 | 徳島県 | T13 | S22・初の公選杉並区長 |
額田六福 | M23-S23 | 劇作家 | 岡山県 | S2 | [荻] 「白野弁十郎」(新国劇)は有名 |
橋本明治 | M37- H4 | 日本画家 | 島根県 | S29 | S49・文化勲章 |
林 房雄 | M36-S50 | 小説家 | 大分県 | S4 | [荻] 左翼ー転向 |
葉山嘉樹 | M27-S20 | 小説家 | 福岡県 | T15 | 左翼・満州開拓村からの引き揚げ途中に病死 |
日夏耿之介 | M23-S46 | 詩人 英文学者 | 長野県 | T15 | 戦前 早大教授、戦後は青学大で講義 |
福田清人 | M37-H7 | 小説家 評論家 | 長崎県 | S10 | 戦後、児童文学・近代日本文学研究に業績 |
藤原審爾 | T10-S59 | 小説家 | 東京都 | S23 | S27(上)「罪な女」で直木賞 |
前田夕暮 | M16-S26 | 歌人 | 神奈川県 | S9 | M44<詩歌>創刊 ”夕暮・牧水時代”の評あり |
三木 清 | M30-S20 | 哲学者 評論家 | 兵庫県 | S4 | 左翼・獄死 |
棟方志功 | M36-S50 | 版画家 画家 | 青森県 | S26 | S45・文化勲章 |
横光利一 | M31-S22 | 小説家 | 福島県 | S2 | [荻] 戦前戦中昭和の象徴的な代表作家との評 |
與謝野晶子 | M11-S17 | 歌人 詩人 | 大阪府 | S2 | 夫婦・寛(鉄幹)は晶子とともに浪漫主義文学 を展開(M30年代)、白秋・啄木等を世に送った |
與謝野 寛 | M6 -S10 | 歌人 詩人 | 京都府 | S2 | |
淀野隆三 | M37-S42 | 仏文学者 | 京都府 | S7 | [荻] 梶井・中谷・外村らの<青空>に参加 |
(注)上記は、小冊子『阿佐ヶ谷文士村(杉並区立阿佐ヶ谷図書館)』(平成5年発行)掲載の66名である。
他資料に照らして明らかに誤記と認めた生年・没年・出生地は訂正した。
「備考」欄は他の資料も参照した。[荻] は「荻窪風土記」に登場する名前、
”左翼”は、左翼文学、運動面で積極的に活動したことを示す。
--- 上記のほか、冨澤文明氏の資料から抜粋 ---
元杉並区立中央図書館専門調査員の冨澤文明氏が調査された資料をお借りした。
同氏のご了解を頂いたので、その資料の中から、上記以外で戦前に阿佐ヶ谷界隈
(中央線の高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪近辺)に住んだ文筆家で、「荻窪風土記」に名前のある方、
”阿佐ヶ谷将棋会”会員と深い親交のある方、昭和文学史上著名な方を選んで一覧表にした。
(同資料は杉並区域に居住した文筆家が対象で、在住期間(転入〜転出)、町名などが記載されているが、
ここでは阿佐ヶ谷界隈居住を対象とし、「転入」欄に初転入の年を記した。その後に区外へ転居された方が多い。)
阿佐ヶ谷界隈に住んだ文士たち
名前 | 生年-没年 | 分野 | 出生地 | 転入 | 備考 |
阿部知二 | M36-S48 | 小説家 評論家 | 岡山県 | S14 | [荻94.173.174] |
石川 淳 | M32-S62 | 小説家 | 東京都 | S28 | S13の"将棋会"に参加 |
石川達三 | M38-S60 | 小説家 | 秋田県 | S12 | [荻178] 第1回芥川賞「蒼氓」 |
大鹿 卓 | M31-S34 | 詩人 小説家 | 愛知県 | S13 | [荻111] 「海豹」 没年時は区内 |
片山敏彦 | M31-S36 | 評論家 詩人 | 高知県 | T14 | [荻77.78] 井伏宅近く。没年まで |
金子光晴 | M28-S50 | 詩人 | 愛知県 | T15 | [荻111] 反戦詩 大鹿卓の実兄 |
金子洋文 | M27-S60 | 劇作家 小説家 | 秋田県 | T12 | [左翼] (「種蒔く人」) |
川端康成 | M32-S47 | 小説家 | 大阪府 | S2 | [荻94.95.176] 約8ヶ月間の居住 |
神戸雄一 | M35-S29 | 詩人 | 宮崎県 | S6 | [荻106.109〜112.203.265] 「海豹」 |
岸田国士 | M23-S29 | 劇作家 小説家 | 東京都 | S1 | [荻99] 演劇指導者としても活躍 |
黒島伝治 | M31-S18 | 小説家 | 香川県 | S4 | [左翼] |
小林秀雄 | M35-S58 | 評論家 | 東京都 | T13 | [荻96] T14:中原中也と女性問題 |
今 官一 | M42-S58 | 小説家 | 青森県 | S6 | 太宰と親交。「海豹」・直木賞(S31上) |
佐々木味津三 | M29-S9 | 小説家 | 愛知県 | S2 | 「右門捕物帖」「旗本退屈男」・没年まで |
中西伍堂 | M28-S59 | 詩人 随筆家 | 石川県 | S4 | S9:「日本野鳥の会」創設 |
中野重治 | M35-S54 | 小説家 評論家 詩人 | 福井県 | S4 | [荻94.95] [左翼] |
中原中也 | M40-S12 | 詩人 | 山口県 | T14 | T14:小林秀雄と女性問題 |
長與善郎 | M21-S36 | 小説家 劇作家 評論家 | 東京都 | S3 | 大正初期から活躍 |
野長瀬正夫 | M39-S59 | 詩人 | 奈良県 | S4 | 木山捷平と親交 |
林 芙美子 | M36-S26 | 小説家 | 山口県 | S2 | [荻95.111] |
平林たい子 | M38-S47 | 小説家 | 長野県 | S2 | [左翼] |
堀 辰雄 | M37-S28 | 小説家 | 東京都 | S15 | [荻96.215] |
本庄陸男 | M39-S14 | 小説家 | 北海道 | S8 | [左翼] 没年時は区内 |
吉川英治 | M25-S37 | 小説家 | 神奈川県 | T13 | 大衆文学 |
龍膽寺 雄 | M34-H4 | 小説家 | 千葉県 | S8 | [荻95] 「新興芸術派倶楽部」 |
(注) 神戸雄一は、冨澤氏資料にはないが、「荻窪風土記」の記述にしたがって入れた。
「生年-没年」「分野」「出生地」「備考」欄は文学辞典等による。
[荻]は「荻窪風土記」に名前が登場する。(数字は「新潮文庫」本の該当ページ)
[左翼]はプロレタリア文学関連。
「海豹」は、創刊時(S8)のメンバー。他に、古谷、太宰、木山、新庄、塩月ら。
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